合同演奏曲

コーラスガーデン合同ステージ「歌い継がれるもの」

 コーラスガーデンの最後を飾るステージは「歌い継がれるもの」と題して合唱音楽の歴史にその名を刻む名曲を合同ステージとしてお贈りします。先人達がその英知を結集して作り上げた音楽は人々の心に深く刻み込まれ、そして何百年という時間を超えて今なお私達の心を掴んで離しません。

その素晴らしい響きを私達はこれからも歌い継いでいかねばならない…それは今を生きる私達がこれからの世代に対してやらなければならない使命だと思っています。今日お聴きの皆様の心にこれらの名作の思いが少しでも伝われば幸いです。

Mass for four Voices(4声のミサ)より Agnus Dei(神の子羊)

William Byrd(ウィリアム・バード)作曲 (1543~1623)

 

指揮

飯倉貞子

演奏

MUSICA FERVIDA

大分市民合唱団ウイステリア・コール

混声合唱団クール・シェンヌ

 

 ウィリアム・バードは、イギリスで活躍したルネサンス音楽の作曲家であり、王室礼拝堂の一員としてイギリス国教会のための数々の名曲を残し、現代のイギリスにおいても「ブリタニア音楽の父」としてとても敬愛されている作曲家である。彼の多くの作品群の中でも特に、3声、4声、5声の3つのラテン語のミサ曲はルネサンス音楽全体の中でも傑出した作品だと言えるでしょう。今回演奏される4声のミサもほとんどが通摸倣形式で書かれており、ポリフォニー音楽の妙味が詰まった作品といえるでしょう。

 

 今回はポリフォニー音楽の演奏には定評のある飯倉先生と3つの合唱団のコラボにより祈りに満ちた演奏をお楽しみ頂きたいと思います。

Cantique de Jean Racine, Op.11(ラシーヌの雅歌 作品11)

Gabriel Urbain Fauré(ガブリエル・ユルバン・フォーレ)作曲 (1845~1924)

 

指揮

福原泰弘

オルガン

 

演奏

合唱団ある

合唱団「葡萄の樹」

MODOKI

 

 フランス音楽史上に大きな足跡を残したフォーレは地方の教育者の家庭に生まれ、9歳でパリに出て、ニーデルメイエール音楽学校に給費生として入学した。ここでめきめきと頭角を表わし、教師として着任したサン=サーンスに目をかけられた。20歳で首席卒業しているが、その時に提出したのがこの作品である。フランス古典悲劇の大家ラシーヌが書いた「宗教的賛歌」の詩には敬虔な信仰心がうたわれて、楽曲は天上界を思わせる美しさである。瞑想的な合唱はオルガンと絡みながら荘厳に響き渡り、力強さをましてやがて静かに消えていく。フォーレの才能の片鱗をみせた小曲である。

 

 今回は様々な外国作品を得意とする福原先生の指揮でオルガン伴奏での演奏にご期待下さい。

Christus factus est(キリストは己を低くして)

Anton Bruckne(アントン・ブルックナー)作曲 (1824~1896)

 

指揮

上西一郎

演奏

招待合唱団合同

 

オルガン奏者を父としてオーストリアで生まれたブルックナーは敏腕オルガン奏者として活躍した後、作曲の勉強を始め1863年ごろからリヒャルト・ワーグナーに傾倒、研究するようになります。彼の作品の中にはその影響が多くみられるのであるが、ワーグナーが舞台音楽を中心に作曲活動を進めたのに対し、ブルックナーの作品には交響曲などの管弦楽曲や多くの宗教合唱作品が中心で当時の作曲家としては珍しくオペラ作品を残していません。音をしっかりと積み上げていく構築感の大きな作風や独特の和声感は、のちのマーラーなどの作曲家にも大きな影響を与えています。

 

 今回演奏するモテットもブルックナーの音楽観が詰め込まれた秀作であり、ロマン派の合唱作品の演奏で日本の合唱界をリードする上西先生の音楽と合同合唱団の熱き魂とのコラボでどんな音世界が広がるか…ご期待下さい。

男声合唱のためのコンポジション『日本の民謡3』より 津軽じょんがら節

KO MATUSITA(松下耕)作曲 (1962~)

 

指揮

伊東恵司

演奏

招待合唱団男声合同

 

 現在日本を代表する合唱指揮者、作曲家として活躍している松下耕氏のライフワークともいえる日本の民謡を題材にとした合唱作品群の中から今回は男声合唱の作品をお贈りします。津軽五大民謡の一つに数えられる「じょんがら節」は明治時代に流行したものを旧節、大正時代には中節、昭和になってから歌われるものを新節といい、その変遷のなかで歌の前に三味線が入るようになったと言われています。ちょうど次に演奏される作曲家のホルストが生きた時代と同じころ青森県で生まれ育った民謡…今回の作品はジャパニーズトラディショナルとしての民謡を松下氏が男声合唱の魅力を活かした斬新なアレンジで仕上げていると言えるでしょう。

 

 今回は日本の男声合唱界に新しい息吹を吹き込み続ける指揮者の一人である伊東先生のタクトで、さわやかでカッコイイ男声合唱の姿が浮かび上がる事でしょう。

Ave maria(めでたしマリア様)

Gustav Holst(グスターヴ・ホルスト)作曲 (1874-1934)

 

指揮

山本啓之

 

演奏

招待合唱団女声合同

 

 19世紀イギリスを代表する作曲家の一人であるホルストは、管弦楽のために書かれた「惑星」(The Planets)が有名でその名を知らない人は少ないと思われますが、合唱のための曲を多く遺しているという事はあまり知られていない事かも知れません。スウェーデン・バルト系移民の家系に生まれ、ロンドンの王立音楽院でパリーやスタンフォードの下に音楽を学んでいます。イングランド各地の民謡や東洋的な題材を用いた合唱作品は今なお多くのイギリス人に親しまれています。今回演奏するAve Mariaは8声、2群の女声合唱のために書かれた作品で特有の美しい響きと祈りに満ちた作品です。

 

 今回は日頃女声合唱をあまり指揮しないという山本先生の指揮でどのような演奏が生まれるか本当に楽しみです。


Agnus Dei(神の子羊)

Samuel Barber(サミュエル・バーバー)作曲 (1910~1981)

 

指揮

雨森文也

演奏

全参加合唱団合同

 

 二十世紀アメリカの作曲家であるバーバーは、同時代の他の作曲家が傾倒していったモダニズムや実験的姿勢とは一線を画し、その作風は和声や楽式において古典的な伝統を重んじた作曲家と言える。またピアニストとしても名手であった事もあり、数多くのピアノ曲や歌曲も作曲している特徴もあります。今回演奏する「Agnus Dei」はもともと彼がイタリア留学中に書きあげた「弦楽四重奏曲第1番」の第2楽章を、のちに「弦楽器のためのアダージョ」として仕上げたものに、本人自らがラテン語の典礼文を使って合唱作品に作り上げた作品である。映画「プラト-ン」のBGMとしても使われた事でも有名であるこの音楽は、荘厳で重厚な和声の上に独特の旋律が歌いあげられるもので20世紀の合唱作品の名曲としてこれからも残っていくものでしょう。

 

 今回は日本合唱界の牽引者である雨森先生の熱い指揮と参加合唱団全てによる合同合唱団でこの作品のもつ深い悲しみや平和への祈りを皆様にも感じて頂きたいと思います。